豚骨醤油味噌ラーメン

いろいろ書きます。

『逃げ恥』と横浜とフォアグラ。

『逃げ恥』スペシャルの放映を待ちながらいま、この日記を書いている。

  

『逃げ恥』の連続ドラマが放映されている時、わたしはちょうど横浜に住んでいた。

ドラマを観ていて、ロケ地が気になることはそんなにないんだけれど、『逃げ恥』のロケは横浜市とタイアップ(?)していたらしく、主に横浜で行われていた。

 

わたしは横浜の関内というエリアの法律事務所に勤めていた。関内には、横浜スタジアムがあり、横浜地方裁判所があり、少し歩けば横浜中華街があり、みなとみらいにも歩こうと思えば歩いて行くことができる。

 

横浜地方裁判所の正面には、綺麗なレストランが二軒あり、そこはドラマやCMや映画の『ロケ地』として頻繁に使用されていた。

 

どれくらい頻繁かというと、一週間に一度はその通りでロケをみかけるほどで、最初は次々に現れる俳優さんや女優さん、モデルさんに興奮していたが、一ヶ月で「またやってる」と日常の風景に変化するレベルだった。

 

例えば、戸田恵梨香さんが出演していた映画『エイプリルフールズ』は、あるレストランを戸田恵梨香さんがジャックする話で、レストランがメインに物語が進むのだけど、そのロケに使用されていたのは、まさに横浜地裁の向かいにあるレストランだった。

 

わたしはそのレストランからものすごく近いビルの中に勤務していた。

法律事務所の事務員には「おつかい」という仕事があって、書類を裁判所に提出しに行ったり、法務局に書類を取りに行ったり、郵便局に切手を買いに行ったり、何かと外出する機会が多い。

 

その、横浜地方裁判所の向かいのレストランでロケをやっていると、道が塞がれていて、警備員のような人に「近寄らないで」と指示を出されることもある。

慣れてくると段々とこちらも、「近寄らないでも何も、こっちも仕事なんですけど」と反感を覚えるようにすらなる。

 

なにしろ、昼食に出かけると横で芸能人も昼食をとっている、ということが起こるくらいだから、そんなに芸能人に対する『ありがたみ』みたいなものがなくなっていく。

 

それでも、『逃げ恥』のドラマが横浜市タイアップということに気がついたときはテンションが上がった。

もしかしたら職場の近くでロケがあるかもしれない。うまくいけばガッキーや星野源さんが見られるかもしれない。

 

漫画原作は好きで読んでいて、初めはそんなにドラマには関心がなかったが、だんだんと星野源さんやガッキーが好きになって行く。

 

星野源がみなとみらいを猛ダッシュしとる。
いつも歩いている場所がテレビに映るだけでどんどんとくべつな気持ちになっていった。不思議なものだ。

 

しかし、いつまで経っても『逃げ恥』のロケに遭遇することはなかった。

仕事なので、いつもその道を見張っていられるわけでもないし(見張るほどのガッツもないし)、見逃す可能性は充分にある。けど、ドラマを観ていても「あそこだ!」と思うことはない。

 

職場でも「『逃げ恥』のロケ、やるかな」と話題になっていたが、「なかなかやらないね」と次第に話題にのぼることも減っていった。

 

けど、ある日の夜、残業で遅くなり、すっかり暗くなった頃に外に出ると、いつもとは比べものにならないくらいの野次馬が通りにあふれていた。

 

まさか、と思ってその野次馬に近寄ってみると、あのレストランでどうも撮影をやっているみたいだった。

 

警備もいつもより厳重で、「絶対に立ち止まらないでください」と頻繁に人が叫んでいる。

 

「『逃げ恥』かな」とどきどきしたが、社会人の理性の方が勝ち、立ち止まることもなくそのレストランの横を通り過ぎた。

 

そしたら最終回で、星野源さんがあのレストランでプロポーズをしていた。

「やっぱりあれは『逃げ恥』だったのか!!」とドラマを観ながら別の意味で興奮した。

 

『逃げ恥』を観ていると、あの芸能人と遭遇しまくったり、いいものばっかり食べさせてもらっていた横浜時代を思い出す。

 

先生方の気前が良くて、「こんなの、一生絶対食べられない」と思うような贅沢をたくさんさせてもらった。

当時は仕事量がえぐすぎて「いいからぐっすり眠りたい」としか思っていなかった時期だけど。思い返せば「別の人の人生の思い出みたいだな」と思うことさえある。

 

ヒールを履いて、今よりもずいぶんマシな格好をして、美しい街路を歩き、書類を作ったり書類を届けたりしながら、お昼ご飯にフォアグラを食べるような日々。

 

なんだったろうな、と思う。

 

そんなノスタルジーに浸りながら、『逃げ恥』のスペシャルドラマを待っている。